12月9日、高校生プログラムの第7回特別講義が、オンライン配信と直接対面によるハイブリッド開催で行われました。12月とは思えない暖かな日となり、会場には多くの受講生が集まり、講義に参加しました。
最初の講義は、工学研究科の 中山 亨 先生による特別講義「エンザイムハンター~暮らしの役に立つ酵素を見つけ出し、利用する~」です。
「幻」と言われていた黄色いアサガオや青いバラ。これらは研究者の長年の粘り強い探索・研究によって解明された、色素合成酵素遺伝子を用いて作出されたものです。講義では、山形特産のベニバナにも触れられ、そのベニバナが、古代は卑弥呼の時代から「紅」として利用されていたとのお話もありました。
「生物がその生命の営みに酵素の触媒機能を活用する戦略は、我々が想像する以上に巧みです。生物のもつ潜在能力を私たちの生活にさらに有効に生かすためにも、生命現象の多様性にもっと目を向け、それを生み出す酵素機能の利用の巧みな戦略や仕組みを解き明かしていく必要があります。」(中山先生)
続いて、歯学研究科の 福本 敏 先生による特別講義「哺乳類の進化における歯の重要性~歯から臓器が作れちゃうってホント?!」が行われました。
講義では「なぜ乳歯は必要なのか」「なぜエナメル質は必要なのか」という発生に関する問いから始まり、歯の歯髄の肝細胞がいろんな再生医療に使われるようになってきている最先端の研究内容についてもお話がありました。
「再生医療に使える材料は体に色々あります。しかし、技術的には可能でも、安全性にとても大きなコストがかかります。まだ技術化と実用化の間には大きな壁がありますが、年月とともに色んなことが解明されており、様々なアイディアを用いながら、研究を進めているところです。」(福本先生)
それぞれの講義の最後には質疑応答が活発に行われました。中山先生、福本先生の、トライ&エラーを何度も繰り返しながらも研究を進めていく、その研究にかける思いに受講生も深く感じ入っていた様子でした。
今回は2つの特別講義後、ミニ講義が行われました。賀川 洋 先生(株式会社iTEP Japan 代表取締役)を講師としてお招きし、「2035年の自分をみつめよう~変化する世界をどう学び、ネットワークしていくか~」というタイトルでお話いただきました。
神聖ローマ帝国や、中国古代の帝国であった唐を例に挙げ、歴史をよく知ることで仮説を立て未来に対するシミュレーションが可能になる、というお話に受講生は興味深く聞き入っている様子でした。
「科学者を目指すみなさんには特に、仮説はどんどん立ててみて下さい、と言いたい。時に仮説は未熟でも構いません。その発想をつぶさずに糧としてください。そして、その仮説を一人で抱え込まず、ネットワークを介して知恵を集め、議論することを怠らないことが重要です。」(賀川先生)
講義終了後、受講生の方から本日の講義についてお話を聴きました。
「中山先生の講義では、酵素の働きを促進させることによって、遺伝子を組み換え、今までにない花の色を作り出せるという仕組みがとても興味深かったです。福本先生の講義では、歯の研究から飛躍して、臓器をつくる再生医療とか、発達障害の研究とか、どんどん研究の幅を広げていくのがすごいと感じました。」(白川雅桜さん)
「今日の最後のミニ講義は哲学に近い講義だと思いました。直接的には理系と関係ないけれども、『未来を予測する』という視点をもつことが、これから研究をする上で、一番大事な視点だと感じました。10年後のことを考えて10年後に合わせた行動をすることが大切、というのは、頭では分かっていたけれども改めて意識していく方が良いと思いました。自分は将来ものづくりに携わりたいと思っていますが、今のニーズに合わせるのではなく、10年後の社会がどうなっているかを想像して携わっていきたいと思います。」(伊藤海都さん)
今回の特別講義は、今年最後の特別講義となります。受講生のみなさんにはぜひ講義の感想などをブログに寄せて頂ければと思います。
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次回、高校生プログラム第8回特別講義は、1月27日(土)です。