青葉山が緑の美しい季節になりました。少し初夏の日差しを感じる5月12日、ジュニア基礎コースの第8回講座が行われました。
第8回講座は、「極大の宇宙の世界とつながる、極小の素粒子の世界」というタイトルで、金田 雅司 先生(大学院理学研究科・准教授)による講義と実習です。
最初は、高校物理の先生になりたいと考えて、大学は教育学部に進学したという金田先生。しかし、大学で専門の物理の勉強を進めるうちに、物理の「研究」も面白いと考えるようになり、大学院では理学研究科物理学専攻に進学されたそうです。その後、研究員として海外の高名な研究所で国際共同実験等にも参加されました。研究に必要な実験装置を自分たちで設計し制作されていることなど、多岐に及んだお話の内容に、受講生は興味深く聞き入っていました。
講座では、先ず「素粒子と宇宙」「原子核と放射線」の二つについての講義が行われました。「素粒子」や「原子核」という言葉は、1月に行われたジュニア基礎コースの第3回講座でも出てきて、ちょっと難しいと感じていた受講生もいたのではないかと思いますが、金田先生の講義で、さらに理解を深めることができたのではないかと思います。
講義の中で、金田先生は加速器が発明された経緯の中で、「基礎科学なくして応用無し」とお話されました。
「GPSによる位置情報を取得するシステムは相対性理論が無くては説明できませんが、アインシュタインはGPSを作ろうとして相対性理論を考えたわけではありません。(加速器のように)純粋に基礎科学の道具として、世の中の役に立つあるいは営利に結び付くようなことを考えずに生まれたものが、基礎科学には多いです。しかしその後、この基礎科学から様々な応用が生まれています。皆さんが見学された放射光施設での物質の構造解析なども、加速器という基礎科学の道具から応用されたものの一つです。」(金田先生)
講義の後は実習です。講義では、私たちの周りには、鉱石由来や宇宙からの宇宙線など、様々な種類の自然放射線があることを学びました。そこで、実習では、受講生は2人1組で、γ線測定器を使い、環境放射線の測定を行いました。受講生は10秒ごとの空間線量率を記録し、測定後はグラフを作成します。受講生にとって、グラフ作成も中々難しかったようで、会場のあちらこちらで苦心している姿が見られました。さて、講義で学んだ放射線の「ゆらぎ」をグラフの中に見ることができたでしょうか。
メンターの皆さんも受講生の間を回りながら、受講生の実習のお手伝いです。
さらに実習では、放射性物質を含むものに測定器を近づけて線源からの距離と放射線量の関係性を調べたり、「霧箱」で放射線の通った跡を観察しました。
講座終了後、受講生の方に講座の感想をお聞きしました。
「『放射線』という言葉には何となく怖いというイメージを持っていたのですが、よく知らないでいたんだなということが分かりました。普段から、わずかではあっても放射線を浴びて生活しているということも、意外という印象を受けました。今日の講座を受けて、放射線のゆらぎの話や、量子力学では(電子が)確率的に決まるという話にも興味が湧いてきました。次回のプログラミングの講座も、以前から興味のある内容なので楽しみです。」(一條世嗣さん)
「放射線」や「核」について、社会では偏見・間違った知見によって偽情報が出回ることもありますが、受講生の皆さんにとって、正しい知識をもつことの重要性を学んだ講座となったのではないでしょうか。受講生の皆さんには、ぜひ講座の感想をブログに寄せて頂きたいと思います。
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次回、ジュニア基礎コ―ス 第9回講座は、2024年6月15日(土)です。
開始時間がいつもと違いますので、お間違いの無いようにお願いします。