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J.of Science EGGS 東北大学基金へのご協力のお願い 探求型 科学者の卵

活動ブログ

2025. 12. 06 | 受講生ブログ(小中学生)

卵の錬金術師

皆さんこんにちは!岩手県立一関第一高等学校附属中学校3年生の石川智久です。このブログでは、科学探求部で行った「科学史の導入(錬金術)」という実験についてのレポートを書いてみました。難しい内容ですが、ご了承ください。かなり危険な物質を使うので家庭での再現は難しいですが、各学校の科学部に属している卵は試してみてください。インフルエンザの影響でなかなか投稿できず、すみませんでした。


1️⃣ 準備物

【器具】保護メガネ、蒸発皿、ピンセット、ざる(金属製)、ガスバーナー、三脚、金網、サンドペーパー(銅板にサビや汚れがついている場合)

【試薬】6mol/LのNaOH水溶液、銅板(3枚)亜鉛粉末2〜3g


2️⃣ 実験方法

実験前に保護メガネを着用するようにしてください。溶液が目に入ると大変危険です。肌についたら大量の水で洗い流してください。

6mol/L NaOH水溶液の溶液調整をします。

①100mL中のNaOHの物質量を求める。

6mol/L=xmol÷0.1L

x=0.6mol

② 100mL中のNaOHの物質量から何g使うか求める。

0.6mol=xg÷40g/mol

x=40×0.6

x=24g

②からNaOHは24g必要であることがわかりました。

③100mLの水とNaOH24gをビーカーに入れ、ガラス棒でよく撹拌する。

注意:水溶液は発熱反応を起こして高温になるので、運ぶ際はよく冷ますか濡れた雑巾などでビーカーを持ってください。

銅板の表面をサンドペーパーで磨き、サビや汚れを落として水道水でよく洗う。

蒸発皿に亜鉛粉末2〜3gを入れ、Ⅰで作ったNaOH水溶液を蒸発皿の3分の1ほどの高さまで加え加熱します。

注意:溶液が飛び散らないように注意しましょう。

沸騰してきたら沸騰してきたら2枚の銅板を溶液中に浸す。

注意:手の油が付かないよう銅板に触れる際は必ずピンセットをしてください。ピンセットが何らかの反応をして溶液に触れたところが気体を出し、黒くなりますが、よく洗えば問題ありません。

1〜2分たったら、金属板を裏返して、両面の色がむらなく変わるようにします。

両面の色が変化したら、金属板をピンセットでつまんで、ざるに入れ、水道水でよく表面を洗い流します。洗い流したものがこちらです。(3枚比較)

※少し左の色が黒っぽく見えますが、しっかりと銀白色になっています。

変色した金属板の1枚をピンセットでつまんでガスバーナーの外炎で軽く揺らしながら炙ります。

注意:このとき、色が変わったらすぐに火から出さないと赤黒くなります。

加熱したものと他の2枚を比較すると、このように、左から黄金色、銀白色、赤褐色の金属板が出来上がりました!


3️⃣ 実験の解説

今回の実験では、鉄や鉛などの卑金属から金などの貴金属を作ろうとする錬金術をしてみました。「これで金持ちになれるぞ!」と思った人もいるかも知れません。勘のいい人は知っていると思いますが、化学反応では原子が新しく作られたり消滅したりすることはなく、原子の種類と数は変わらないという「質量保存の法則」があります。このような法則があるので、銅や亜鉛から金や銀ができることはないのです。では、なぜこのように黄金色や銀白色になるのでしょうか?それはⅢとⅣ、そしてⅧでこのような反応が起こっていたからです。ここからは高校化学の知識が入ってくるので、難しい方は✫まで飛ばして読んでください。

まず、Ⅲでは、 Zn+2NaOH+2H₂O→Na₂[Zn(OH)₄]+H₂ という反応が起こり、亜鉛は酸性にも塩基(アルカリ性)にも反応する両性元素なので溶けてしまいます。亜鉛のみに注目すると、 Zn→Zn²+2e⁻ という反応が起こっており、亜鉛は電子を失い酸化されていることがわかります。

そして実験Ⅳの銅板の表面では、 2H₂O+2e⁻→2OH⁻+H₂ と [Zn(OH)₄]²⁻+2e⁻→Zn+4OH⁻  の反応が同時に生じます。前者ではその電子を水が受け取っており、後者ではテトラヒドロキシド亜鉛(Ⅱ)酸イオン([Zn(OH)₄]²⁻←この式のイオン)が電子を受け取り、亜鉛イオンが電子を受け取り還元されます。✫この反応が銅板上で起こるので、銅板が亜鉛でメッキされ、まるで銀になったように見えるのです。

そして実験Ⅷでは、亜鉛と銅の融点がそれぞれ約420℃、約1090℃なので、ガスバーナーで燃やすことで溶けた亜鉛に銅が溶け込む形で銅と亜鉛の合金、「黄銅」ができます。黄銅は黄金色なので金になったように見えるのです。ちなみに黄銅は5円玉や金管楽器の素材として利用されています。錆びにくく、長持ちするので実験後でも長く観察する事ができるでしょう。鉱物で黄銅鉱というものがありますが、これは黄銅とは違う物質なので勘違いしないようにしてください。私も勘違いしていました。


4️⃣参考文献

電気書院 高校化学実験集

電気書院のホームページ→https://www.denkishoin.co.jp/


5️⃣その他

https://www.youtube.com/watch?v=ywwxtE3eaGg

⤴️かの有名なGENKI LABOで科学史などを含めた解説動画がありますのでぜひ見てください。

https://www.rikelab.jp/post/11134.html

⤴️私とは違うやり方で、かの有名な薬理凶室のくられ先生とレイユール先生が実験をしていました。本物の黄金との比較もあるのでわかりやすいです。


非常に長かったですが、最後まで読んでくださりありがとうございました。

投稿者 : 岩手県立一関第一高等学校附属中学校


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