こんにちは、東北学院高校の矢口智也です。2025年が明け、新しいことに挑戦しようと思っている次第です。今年もよろしくお願い致します。
先日、実際に渡り鳥(冬鳥)が多く見られる、宮城県県北(栗原市・登米市)のラムサール条約登録地、伊豆沼・内沼へ足を運びました。伊豆沼・内沼は、日本国内で一時期数を大きく減らしていたガンの飛来数が日本一の湿地帯であり、釧路湿原に次ぐ、国内二番目のラムサール条約登録地となりました。ガン以外にも多くのハクチョウやカモといったシベリアから飛来する場所です。遂に「まちかど」ではなくなった今回のブログでは、個人的に中学1年生のときから始めていた研究に向けた記録を少しではありますが共有していこうと思います。
その日の宮城県の日の出の時刻は6時54分。この時間とほぼ同時に塒入りのために湖から周辺の田んぼへ向かって飛び立つガンの様子を観察しました。ガンは早朝に湖から周辺に広がる田畑へと、植物の果実や種子、小動物などを食べるために移動します。昼頃になると、市町村を跨いで様々な場所で観察することが出来ました(下画像一番右)。
そして、上の写真のような、大型の冬鳥によく見られるV字型飛行を見ることができました。湖にいるガンの群れが一斉に飛び立つシーンを見ることは出来ませんでしたが、天候などの条件によっても異なるのかもしれません。ちなみにV字型飛行をする理由としては、先頭の個体が羽ばたくことで生み出された気流を利用して、楽に集団として飛ぶことができるようにするためであると言われています。
(V字型飛行に関する記事ー参考:Why do birds fly in a V? Endangered ibis reveals its amazing secret – latimes.com
http://www.latimes.com/science/sciencenow/la-sci-sn-birds-v-formation-flight-northern-bald-ibis-nature-bioinspired-20140115,0,3808246.story#axzz2qVXaOus6)
ガンの観察スポットから少し移動するとより近くで野鳥を観察することが出来る場所があります。(ただし、無闇に近づき過ぎると鳥にストレスを与える可能性があるので気をつけるべきポイントです。)今回観察することができたのは、オオハクチョウ、オナガガモ、オオバン、マガモの4種類でした。
↓左からオナガガモ、オオハクチョウ、オオバン。(マガモは撮影できませんでした…)
伊豆沼には何度も足を運んでいますが、最も数の多い鳥種はオナガガモで、数百羽が密集していました。オナガガモは比較的水の流れが少ない湖等に多くいるイメージが個人的には強くありますが、カモの種類によっても密集する場所の特徴といったものがあるのか、調査をしていこうと考えています。ちなみに、過去に同地点を訪れた際は上記に示した種類に加えて、他複数の鳥種を確認することが出来ました。同じ冬鳥でも集まる時期が異なることもあるのかもしれません。
↑左から、ホシハジロ(2023年2月撮影)、ハシビロガモ、キンクロハジロ(2022年12月撮影)
伊豆沼から南西に移動すると内沼があります。
全体的な様子は、湖の真ん中の方に大きな群れ(画像の上部に大きな群れが少し見える)があり、そこから分離した一部の集団が水辺に集まっていました。内沼の水辺を歩いていると、撒菱のような見た目である、ヒシの実がたくさん落ちていることに気づきました(上画像右)。周辺の森林から落ちたものが打ち上げられたものと考えられます。度々、オナガガモが突いている様子を見ることがありましたが、実際に食べているのかは不明です。
また、内沼には伊豆沼では見られなかった、ユリカモメを見ることが出来ました。カモメは海にいるイメージが強いですが、私は水を張ったばかりの田んぼに飛んできているところを見たことがあるので、単に水が豊富にある場所に飛んでくるというだけかもしれません。
↑ユリカモメ
野鳥を観察する上で少し複雑な気持ちになるのが、野鳥への餌やり。何度も餌やりをする光景を見ることがあり、近くの施設でも販売されているほどですが、自然界で野鳥自身が生き抜いていくためにはあまり良いことではないかと考えます。楽に餌をとる方法を覚えてしまうことで自力で餌を探す能力が失われる可能性があり、冬鳥なのに暖かくなっても残っている、といったようなことが起こり得ます。私はこの水辺の近くに集まっている集団が人からの餌を食べているところを目撃したことがあり、おそらく人慣れしてしまっているのだと思われます。
(野鳥観察の上での注意ー参考:日本野鳥の会、野鳥観察・撮影の初心者の方に向けた、マナーのガイドライン
https://www.wbsj.org/activity/spread-and-education/bbw/manner-guideline/)
また、伊豆沼・内沼の近くには野鳥や淡水魚、昆虫などに関する展示をしている施設がいくつかあり、それらを見るだけでも有意義な時間を過ごすことが出来るかと思いますので、お時間あるときに来訪してみるのはいかがでしょうか。朝4時半に起床し、高速道路を利用しての移動はとてもハードなものでした。その分、野鳥の観察がいつも以上に楽しいと感じました。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。科学者の卵養成講座もこの1年間の活動はそれほど長くはないかと思います。興味関心を育み、グループワークなどを通して最後まで真摯に取り組んでいこうと思います。
(おまけ)
伊豆沼・内沼とは別の場所に、同じくラムサール条約登録地である、化女沼(大崎市)があります。農業用水を確保するために化女沼ダムが平成8年に造られ、その後平成20年になってからラムサール条約登録地となりました。
この日は伊豆沼・内沼とは大きく異なり、オオハクチョウのみを見ることが出来ました。伊豆沼・内沼からそれほど遠く離れているわけでもないですが、ここまで個体数に差があるとは驚きでした。(この日化女沼全体で見つけられたオオハクチョウの数はたったの13羽)
ちなみに、化女沼には2001年に閉鎖された「化女沼レジャーランド」という遊園地の施設が残っており、これまで何度もメディアに取り上げられています。綺麗な湖の近くに廃墟化した施設があるということで、廃墟巡りを趣味にする人を見かけることがあります。科学とは全く関係ないですが、ここを訪れてみるのもありかもしれません。(?)
投稿者 : 東北学院高等学校