皆様ごきげんよう!仙台白百合学園高等学校II年生の石橋楓(ふう)です。
お庭を散歩していたらレモンの木にアゲハ蝶の幼虫がいらっしゃったので、アゲハ蝶の幼虫の歩き方についてお話しようと思います。
まず皆さま、アゲハの幼虫を見てどう感じますか?
「ちょっと苦手…」という方もいれば、「なんだか可愛い!」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。私にとっては、人間の赤ちゃんと同じくらい愛らしく思える存在です。
じーーーっくり観察してみると、くりくりのおめめ(※実は目のように見える模様なんです!)と、もこもこしたたくさんの脚がとてもキュート。
そう、体の前方にある大きな黒い点は“偽の目”で、捕食者を驚かせたり、身を守ったりするための工夫なのです。ほんとうの目は小さくて、目立たない場所にあるんですよ。不思議ですよね。
次に、歩き方に注目してみてください。ちょこちょこちょこゆらゆら…なんだか人間の赤ちゃんが頑張ってハイハイ歩きをしているような感じですね!とっても可愛い!なんだか波を打っているような…ぽよんぽよんしているような不思議な歩き方をしていますね。
アゲハチョウ幼虫の“よちよち波乗り歩き”
実は波を打つという表現は間違っていないのです。アゲハチョウの幼虫は、人間のような骨は持たず、全身を覆う筋肉と消化管の動きによって移動するのです。 まず 「腸(=消化管)」が身体の後端で収縮し、波のような動きが前へ進むことで体全体も波の動きで進むのです 。
この「波状収縮」という動きによって、全身がしなやかに連動し、まるで波の上を滑るような優雅な動きになるのです。
歩行のメカニズム
アゲハチョウの幼虫には、前脚と腹脚の2種類があり、合計16本の足があります。 一部の脚で体を固定し、徐々に他の脚で引き寄せることで、体をS字形に波打たせながら前進。これはプロレッグと真脚を順番に使うことで生まれる動きです 。 さらに面白いのは、運動時に“腸(内臓)が先に動いて体を引っ張る”ような、内部から波が伝播する動きも観察されていること。これはマンドゥカ属(タバコガの幼虫)を対象にしたX線研究から分かっています 。 この「内部→外部」の波状シーケンスが、幼虫の地面との接触を最適化し、滑りにくくする設計として進化してきたのでしょう! 筋肉だけでなく内臓のタイミングも含めて「全身がひとつの波」になっているなんてなんとも面白い進化ですね。
手書きイラストです。足の数は全くあっていませんがイメージなので気にしないでください。
なぜこの歩き方?生態的意味とは
足の掛かりを確保 丸い葉や茎で滑りやすい環境でも、仮脚と真脚を交互に使うことで安定した移動を実現。 植物の茎や葉の複雑な形状の上でも対応可能です。
静かかつ確実に進行 静かで目立たない動きは、天敵からの発見を避けるのにも役立ちます。
全身を使う効率的モーション 骨がない分全身が波のように連動させることで、エネルギー効率良く)スムーズに移動できるしくみです。
まとめ
庭で出会ったアゲハ蝶の幼虫。その「波を打つような歩き方」は、真脚とプロレッグ、さらには内臓の動きまでも連動させた、驚くほど洗練された運動メカニズムによるものでした。いわば、骨を持たない体だからこそ可能な「柔らかい工学」の結晶です。
身近な自然には、教科書では学べない発見がたくさん隠れています。何気ない散歩の中にも、深い科学と進化の知恵が宿っていることを、改めて実感しました。
最後に参考文献です。
参考文献(使用リンク)一覧
「幼虫の波状歩行」「消化管が動きの起点になる」というメカニズムについて
消化管から先に動くgut-first locomotionの解説とX線観察研究について
幼虫の構造(真脚・腹脚)、擬似の目などの情報源として
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Caterpillar?utm_source=chatgpt.com
ミミズやイモムシなど、“波打つように進む”動物の運動モデル
https://lab.sdm.keio.ac.jp/maenolab/previoushp/Maeno/boundary.pdf?utm_source=chatgpt.com
最後まで読んでくださってありがとうございました。それでは皆様ごきげんよう。
投稿者 : 仙台白百合学園高等学校