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活動ブログ

2025. 09. 24 | まちかどサイエンス

火星

皆様ごきげんよう、仙台白百合学園高等学校の石橋楓(ふう)です。先日、NHKのニュースで驚くべき話題を見つけました。NASAが火星で微生物の痕跡を発見した可能性を発表したのです。2025年9月10日の『Nature』誌に掲載された研究で、火星のジェゼロ・クレーターの岩石に生命の兆候があるかもしれないという内容です。火星というと、探査ローバー「オポチュニティ」を思い出しますね。2004年に火星に着陸したこのローバーは、双子のSpiritとともにMars Exploration Rover(MER)ミッションで送り込まれ、予定の90日をはるかに超えて約15年間も活躍しました。岩だらけの地形や砂嵐を乗り越え、45キロ以上を走破し、21万枚以上の写真を地球に送り続けたその不屈の姿は、今も科学ファンの心に残っています。月探査情報ステーションのブログでも、オポチュニティの功績が「火星の水豊富な過去を証明した」「数々の記録を樹立した」として紹介されており、今回の発見はそんな歴史に続く新たな一歩です。科学ブログらしく、事実を軸に、宇宙の可能性について書いてみます。発見の舞台は、火星のジェゼロ・クレーター。約35億年前、湖や河川デルタが存在し、水が豊富で生命が育まれる条件が整っていたとされています。NASAの探査ローバー「パーサヴィアランス」が2024年7月に岩石の表面を調べ、鉄と硫黄を含む化合物、そして有機分子を含む直径数ミリの斑点を検出しました。有機分子は、炭素を基盤とした生命の構成要素で、地球では微生物が有機物を分解する際に生じます。この発見は、遠い過去に微生物のような生命が存在した可能性を示しています。NASAの暫定局長ダフィー氏は、「これまでで最も明確な生命の兆候かもしれない」と興奮気味に述べました。オポチュニティの貢献を振り返ると、この発見の重みがさらに増します。MERミッションでSpiritとともに火星の過去を探ったオポチュニティは、着陸からわずか3ヶ月でヘマタイトの「ブルーベリー」(水豊富な環境で形成された球状鉱物)を発見し、火星がかつて液体水に満ちていた証拠を提供しました。また、堆積岩や石膏の鉱脈、中性pHの粘土鉱物を見つけ、生命の可能性を高めるデータを大量に送り返しました。予定の90日を60倍以上超える15年の活動で、地球外惑星上で最長の走行距離45.16kmを記録し、急斜面のクレーター脱出や砂の罠からの脱出を繰り返すなど、過酷な火星環境を克服。342,000枚以上の画像も公開され、火星の地表を人間の目線で捉えたパノラマ写真は、科学者や一般の人々に大きな影響を与えました。パーサヴィアランスは、そんなオポチュニティのバトンを引き継ぎ、最新技術でジェゼロ・クレーターを調査。今回の有機物と化合物の発見は、オポチュニティが示した水の痕跡に続く、生命探しの新たな進展です。ローバーたちの積み重ねが、こんな大きな成果につながったのです。この発見の意義は、宇宙に生命が存在する可能性を広げる点にあります。火星は現在、極寒で乾燥した不毛の地ですが、35億年前には暖かく水が豊富だったとされています。パーサヴィアランスが検出した有機物と鉄・硫黄の化合物は、地球の微生物が残す痕跡に似ています。まだ確実な証拠ではありませんが、科学者たちはこれを「バイオシグネチャー」の候補と見ています。もし本当に火星に生物がいたなら、地球外生命の存在が現実味を帯びます。哲学や宗教、科学の教科書、さらにはSF作品にも影響を与え、人類の宇宙観が変わるかもしれません。将来、火星の化石が博物館に展示されたり、火星の生命進化を学ぶ授業が生まれたりする可能性もあります。そんな未来を想像すると、科学の進歩にワクワクします。ただ、課題も残っています。NASAは、発見を確実にするには火星のサンプルを地球に持ち帰り、詳細に分析する必要があると言います。パーサヴィアランスはすでにサンプルを収集していますが、トランプ政権下での予算削減により、2020年代後半のサンプルリターン計画が危うくなっています。オポチュニティが過酷な環境で最後まで粘ったように、この計画も実現してほしい。科学が政治や予算に左右されるのは残念ですが、宇宙探査の重要性を伝え続けることが大切だと感じます。いつか、火星の岩石を地球の研究室で分析できる日が来ることを願っています。このニュースは、微生物レベルの発見から、宇宙全体の生命の物語を考えるきっかけをくれます。オポチュニティが切り開いた道を、パーサヴィアランスがさらに進め、火星の岩石から生命のヒントを見つける。もし火星に生命がいたなら、地球の生命の起源や宇宙での人類の役割について新たな問いが生まれれると思います。火星の赤い大地に隠された物語を追いかけるのは、科学の醍醐味です。次はどんな発見が待っているのか、楽しみにしたいと思います。

 

NHKニュース記事「NASA『微生物が存在した可能性 火星の岩から痕跡発見』https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250911/k10014919491000.html
月探査情報ステーション「オポチュニティについて知るべき6つのこと」
その他新聞記事等
以上参考文献

投稿者 : 仙台白百合学園高等学校


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