皆様ごきげんよう!仙台白百合学園高等学校の石橋楓です。第三回の講座が本当に素晴らしく今も興奮が冷めないくらいなのでブログを書いてみようと思いました。拙い文章ですが私の熱意と気合いが伝わると嬉しいです。
地図が大の苦手な私は、講義当日、案の定迷いました。いつもと違う会場と聞いていたので、早めに出たつもりが、建物の名前を見てもピンと来ず、スマホの地図を見ても方向感覚が狂ってしまい、ぐるぐると周辺を歩き回る羽目に。ビビりな私は思わず後輩に連絡してしまいました。情けない先輩に優しく教えてくれて、すぐに場所が判明。なんといつもの会場のすぐ目の前の建物ではありませんか。拍子抜けする近さに思わず笑ってしまいました。あの時後輩が教えてくれなかったらきっと講義に間に合わなかったなと思います。感謝と驚きと夏の暑さが入り混じった、そんな幕開けから始まった第3回講義です。講義内容は笑って済ませられないほど濃密で、家に帰る道中友人につい電話をかけてしまうほど刺激的であり、心を揺さぶられるものでした。
この講義は2025年8月7日に東北大学青葉山キャンパスで開催された、日本学術会議主催の公開シンポジウム「研究者になって世界を駆け巡ろうⅡ~研究者の卵たちと共に未来を描く~」の一環として行われました。講義は、開会挨拶から始まりました。日本学術会議会長の光石衛先生、東北大学総長の冨永悌二先生、そして東北大学工学研究科長・工学部長の伊藤彰則先生がそれぞれ登壇され、科学と社会の関係、未来を担う若者への期待、そして研究の意義について力強く語られました。その言葉の一つひとつに重みがあり、講義が始まる前から身が引き締まる思いがしました。自分がこの場にいることの意味を改めて考えさせられ、これから始まる講義への緊張と期待が高まりました。
最初に登壇されたのは、山形大学の城戸淳二教授。有機ELの第一人者である城戸先生の講義は、「世界で輝くための3つの鍵」というタイトル通り、技術者としてだけでなく、人としてどう世界に飛び出していくかというような壮大なテーマでした。
有機ELの話はもちろん興味深かったのですが、それ以上に印象的だったのは、先生の語る三つの鍵である「好奇心」と「想像力」と「やる気」。世界で活躍するためには、失敗を恐れずに挑み続けること、何をしにこの世に生まれてきたかどんなミッションを持って生まれてきたかを考えて生きるという言葉に胸が熱くなったともにミッションスクールに通っている私には気づかされるものがありました。技術の話を超えて、生き方そのものを問い直されるような時間でした。
さらに驚いたのは、テレビや雑誌にも登場し、ノーベル賞候補とも言われるような世界的研究者である城戸先生が、実は本当にゼロからのスタートだったということ。若い頃は講演で緊張して話せなかったこともあったそうで、人は変われるものだと語る姿に、親しみと勇気を感じました。
講義はユーモアを交えながらも本質を突く内容で、難しい話もわかりやすく、面白く伝えてくださり、有機ELという初めて触れた分野でもすっと頭に入り脳がにこにこ喜んでいるような感覚でした。自分でも本当にびっくりでした。研究者というと遠い存在に感じがちですが、城戸先生の話を聞いて、「自分にもできるかもしれない」と思えるような、そんな希望に満ちた講義でした。
そして講義の中で触れられた未来技術の話の中には、「スクリーンがなくなり、脳に直接映像が送られるようになるかもしれない」という話題もありました。実際、脳活動から映像を再構成する研究や、視覚障害者の脳に直接映像を送るインプラント技術などが進んでいるそうです。それを聞いたとき、技術の進歩に驚くと同時に、少し恐ろしさも感じました。便利さの裏にある倫理や安全性の問題にも目を向けなければならないと、未来への期待と不安が入り混じるような気持ちになりました。
続いて登壇されたのは、国立情報学研究所の黒橋禎夫教授。生成AIの中核技術であるLLM(大規模言語モデル)について、最先端の研究を紹介してくださいました。LLMは、膨大なテキストデータを学習し、人間のように言葉を理解し、生成するAI。その仕組みだけでも驚きなのに、黒橋先生はそれを「Team Science」として捉え、個人ではなくチームで開発することの意義を強調されていました。“If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.”という言葉を私たちに贈ってくださいました。「もし君が早く行きたいなら、一人で行きなさい。もし君が遠くへ行きたいなら、一緒に行きなさい。」という意味です。この言葉には、研究という長く険しい道のりを、仲間とともに歩むことの大切さが込められているように感じました。正直、チームで開発していくのは大変そうだとも思いました。意見の違い、役割分担、責任の共有など。一人でやる方が楽に感じる瞬間もあるかもしれません。それでも、遠くへ行くためには、誰かと協力し、支え合いながら進むことが必要なのだと、この言葉が教えてくれたように感じます。
日本語に特化した「LLM-jp」の話は非常に興味深く、日本語という言語文化を守りながら技術革新を進めるという姿勢に、深い共感を覚えました。このプロジェクトでは、定期的にLLM勉強会が開催されており、自然言語処理や計算機システムの研究者たちが集まり、オープンソースの日本語LLMの開発に取り組んでいるそうです。LLM勉強会に少し興味を持ったので私も申し込んでみようと思います。
AIが人間の言葉を理解するということは、単なる技術ではなく、人間そのものを理解しようとする営みなのだと感じました。そのときふと、ChatGPTのことを「ドラえもんのほんやくこんにゃくみたいだ」と言っていた人の言葉を思い出しました。気づけば、日常の中にドラえもんの道具のようなものがあふれているのかもしれません。翻訳、記憶補助、創造支援、雑談まで、まるで未来の道具が現実になったような感覚です。
でも同時に、もし本当にハルシネーション(誤情報)が限りなくゼロに近いAIが登場したら、それは人間の存在意義に問いを投げかけるのではないかとも思いました。人間の「間違えること」や「迷うこと」すら、AIが補完してしまうとしたら、私たちは何のために考えるのか? そんな哲学的な問いが浮かびます。
さらに、映画『サマーウォーズ』のように、AIが暴走して仮想世界OZを乗っ取り、現実世界にまで混乱を引き起こすような事態が本当に起こるのではないかという不安もよぎります。あの作品では、家族の絆と知恵が世界を救いましたが、現実の私たちはどうでしょうか。AIが社会の中枢に入り込む今、技術と人間性のバランスをどう保つかが、ますます重要になっていると感じました。
三人目は、東北大学の市川温子教授。素粒子物理学の最前線から、宇宙誕生の瞬間をニュートリノで探る研究について語ってくださいました。物理初心者の私が理解できるのかと不安でしたが前回の講義で金田教授のクォークの講義があったので抵抗感なく望めました。先生の熱い熱意のこもったスピード感のある講義に圧倒されました。短い時間に自分の大好きな分野のことを伝えたいという気持ちがとても伝わってきました。ニュートリノという、ほとんど質量がなく、物質をすり抜ける粒子が、宇宙の始まりを解き明かす鍵になるという話は、まるでSFのようでありながら、現実の科学の話。1ピコ秒後の宇宙を垣間見るというスケールの大きさに圧倒されながらも、地下深くに設置された巨大な検出器でその痕跡を捉えるという地道な努力に、科学者のロマンと執念を感じました。宇宙の始まりを知ることは、私たち自身の存在の意味を問い直すことでもあるのだと、静かに心が震えました。
四人目は、東北大学の本橋ほづみ教授。生命科学の新たな地平を切り拓く「超硫黄分子」についての講義は、まさに目から鱗の連続でした。硫黄原子が連なった構造を持つ超硫黄分子が、抗酸化作用やエネルギー代謝、免疫応答など、生命の根幹に関わっているという話は、まるで生命の設計図を覗き見ているような感覚。炎症やがんの病態にも関与する可能性があるということで、医療の未来にもつながる研究だと感じました。分子レベルの話なのに、そこから見えてくるのは人間の健康や生き方そのもの。科学が人間に寄り添うとは、こういうことなのだと思いました。
最後に登壇されたのは、東北大学の平田泰久教授。AIロボットによる未来社会のビジョンを描く講義は、まさに未来への招待状でした。2050年までにすべての人が参画できる活力ある社会の創成を目指していることを知りました。このプロジェクトでは、個々のユーザーに合わせて形状や機能を変化させ、適切なサービスを提供できるロボット群の開発が進められているそうです。2050年にはSFの世界のような未来になっているのかもしれないと思うとワクワクしてしまいますね。特定の環境下でも柔軟に対応できるロボットが実現すれば、介護施設や災害現場など、さまざまな場面で人々の生活を支える力になると感じました。さらに、ロボット同士が協調しながら人間を支援するという発想は、単体のロボットではなく、社会全体を支えるインフラとしてのロボット群の可能性を示しており、非常に未来的で魅力的でした。ロボットが人間の挑戦を支援し、「できるかも」という気持ちを育てるという話は、技術が人間の可能性を広げるという希望に満ちていました。Robotic Nimbus構想という、雲のように柔軟で人に寄り添うロボット群の話は、まるで未来の童話のようでありながら、実際に社会実装に向けて動いているという現実に驚きました。AIロボットが日常に溶け込む未来は、もはや夢ではなく、すぐそこまで来ているのだと実感しました。
五人の先生方の講義はどれも刺激的で、まるで頭の中が次々とアップデートされていくような感覚でした。内容の濃さに圧倒されながらも、もっと知りたい、もっと深く理解したいという気持ちがどんどん膨らんでいきました。講義が終わって家に帰ってからも興奮が冷めず、気づけば二時間以上も家族に今日の内容を話し続けていました。それほど、自分の中で何かが動いた一日だったのだと思います。
グループディスカッションもとても楽しくて、同じように興味を持っている仲間と意見を交わすことで、自分では気づけなかった視点にも触れることができました。話すことで考えが整理されていく感覚が心地よくて、もっとこういう場に参加したいと思いました。
今回の講義を通して、自分が本当に興味を持っている分野や、これから深めていきたいテーマの軸が少しずつ見えてきたような気がします。まだまだ学ぶことはたくさんありますが、今日の経験をきっかけに、自分の進む道をしっかりと歩んでいきたいです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。後輩に迷惑をかけないためにもう少し方向音痴を克服できるよう努力したいと思います。それでは皆様ごきげんよう。
投稿者 : 仙台白百合学園高等学校